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何が○○を○○させたか <金子文子そして鈴木重吉>

金子文子

映画『金子文子と朴烈(パクヨル)/イ・ジュンイク監督/2017/韓国』

今年100周年を迎えた「(朝鮮)三・一独立運動」後日本に渡り反日運動の旗を振った朴烈が、7年間の実祖母との朝鮮での生活を初めとした過酷極まる薄幸の末、朴同様アナキストとなった日本人女性金子文子と日本で出会い、死刑判決を受け、文子が獄中死するまでの約3年を描く。差別が生んだ思想・活動ではあったが、不幸は重なり1923.9.1関東大震災に見舞われ、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などのデマが流布し、自警団が朝鮮人虐殺を行う中、震災翌々日9.3に逮捕される。皇太子暗殺計画を自白したことで大逆罪に問われ死刑判決が下るも、国際批判を恐れた日本政府の恩赦により無期懲役に。

文子は獄中記を書き続ける。これを後に一冊の本としてまとめ上げられたのが「何が私をこうさせたかー獄中手記/金子文子著/岩波文庫」だ。映画にはない、文子の幼少からの虐待と決意の構築過程が綴られ、なぜ劇中の文子がこうあるか、当時なぜこんな日本人がいたかが良く分かる好著。

映画『何が彼女をさうさせたか/鈴木重吉(しげよし)監督/1929/DVD』

何が彼女をさうさせたか/鈴木重吉

関東大震災の6年後この映画は製作された。主人公すみ子は生き場所を求め点々とするも、次第に世を儚み、最後は大罪を犯してしまう。作品としても、また日本映画史上代表的な「傾向映画(左翼的視点)」としても高い評価を受けた。その後長期間フィルムは消失していたが、1930年にソビエトで公開されたプリント1本が発見され修復、DVDとして発売された。残念ながらフィルムは全体の37%が失われているが、画像消失個所は字幕に置き換えられストーリーは伝わる。鈴木重吉監督は我が師高柳昌行の寡婦道子氏の父君。高柳は義父に大きな影響を受けている。

このほぼ同じ時代の、似たタイトルの原作本と映画。共通するのは、意地悪、決めつけ、そして差別がある。強い立場の人間が、自分たちの優位性を保つべく、差別化を成立させるために、様々な粗探しをし、罠をも仕掛ける。100年前に警鐘は鳴っていた。

♬写真は映画公式サイト、DVDジャケットから拝借

#金子文子 #鈴木重吉