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ミュージシャン 音楽

多様性、1975年

Tower Of Power

 2017晩夏、ホームページを作っていた。私のような素人でもプロバイダが提供するアプリで、ちょっと馴れてくればある程度までできてしまう。デザインと文章整理の作業中、これは音楽でも聴いていないともったいないと、当たり前の事を思い、18才の頃流行った『Thrust/Herbie Hancock』の特に”Spank-A-Lee”, “Actual Proof”を聴いていた。約一ヶ月半、この2曲をず〜っとと言って間違い無い。ハンコックはジャズピアノの弾き方を革命的に変えたと言われるが、私の耳が行くのはベースのポール・ジャクソンだ。当時の新しいファンクミュージックのなかで新しいベーススタイルを確立させた。ハンコックとのやりとりは絶妙で、大きな示唆も感じさせるそれは、コルトレーンバンドのエルビン・ジョーンズのようにも思える。その後ポール氏は日本に移住して、ライブハウス”りぶる”があった市川の街でよく行き会った。マスターの計らいなどで数回演奏した。

 床が動く。

Head Huntersのころ聴き込み、一緒に音を出した時の迫力とスピード、そして今回ヘビロテでまた違う奥深さを感じる。なにより自由でユニークだ。

 エルビン氏とも、ピットインとその企画のプロデューサーの計らいで一回だけライブで演奏した。ベースはリチャード・デイビス氏だったから更に幸運だった。

やはり床が動く。25才の若造は右も左も、もちろん前も後も分からずただ身を委ねた。狭い楽屋で緊張のあまり咳払いをする私に「カゼかい?」と優しく声をかけてくれたのもエルビン、極東のひ弱な少年を受け入れてくれた。そのスイング感は極めて心地よく、幼児期から朧にあったスイングの感覚を最も良い形で確認でき、これで良いのだと思えた日だった。

幼少期は、音楽好きな祖父母、母、伯父伯母の中、様々なジャンルの音楽に触れた。自発的に聴くようになったのは中学生ぐらい。ポップス(洋楽)、ロックを皮切りに、ブラスロック、更にブラックミュージックに関心を抱く様になる。ビートルズに興味を持たなかった私だが、”Get Back”に黒人ピアニスト・ビリー・プレストンが入った瞬間に耳を奪われた。その後はどんどんブラックに進み、クルセイダーズ、ポインター・シスターズ等は両者の来日ジョイントライブも観た。ジャズコーラスグループとしても優れたポインター・シスターズは、ブラジルのコーラスグループQuarteto En Cyにもみられる、姉妹ならではの絶妙で不思議な連携、ハーモニーがあり、命の繋がりが伝わってくる。その後こういう命の力を感じたのは、音楽では無く澤穂希氏率いるなでしこジャパンだった。

Tower Of Powerは、オルガンとボーカルのみが黒人。とはいえサンフランシスコ〜オークランド出身のグループなので人種は混在する。ラテン色も香る。ブラック一直線に進んでいた私にはクルセーダーズなどよりはちょっと淡泊に聴こえていた。

 ……45年程過ぎ、クラウドミュージックのおかげで別のライブ盤を発見した。

録音は簡易的だが演奏は凄い。スタジオ録音よりテンポもアップしているが、雑になるところも無くパワーアップ、それは素晴らしい技術でもある。西海岸ベイエリアのローカルバンドがその群を抜いたシャープなリズムで世界的にヒットしたわけだが、彼等にとってNYでプレーすることは喜びと同時に大変なプレッシャーだったと思う。それをすべて力に変えた名演がいま聴ける。

 Head Huntersも日本で人気の黒人ドラマー・ハービー・メイソンから白人ドラマー・マイク・クラークに変わった時は違和感を感じたが、今聴くと、ポールとマイクが完璧なコンビネーションを保ちつつも、やはりルーツの違いがあって、それが功を奏し音楽全体に複雑さが現れたように思う。私が偏っていたのだ。Tower Of Powerは全方位形バンド。ここでも大事なのは多様性だった。

名前をみても多種多様

Tower Of Power

Emilio Castillo (sax)
Lenny Pickett (sax)
Steve Kupka (bs)
Greg Adams (tp)
Mic Gillette (tp)
Chester Thompson (key)
Bruce Conte (g)
Francis Rocco Prestia (b)
David Garibaldi (ds)
Hubert Tubbs (vo)

PS:私見だが、本文後半に登場の各バンドお奨めはデビューから3年以内、1976年ぐらいまで。人気が出ると手を加えられもはや本人達のオリジナリティは薄れ、オリジナルメンバーも離れていったりする。

#TowerOfPower