ふたつの10年
ふたつの10年
私が21〜2の頃、大きなジャズコンサートに出演する機会を戴きました。岩手県盛岡市の大ホールでのジャズフェスティバルは、当時盛岡の拠点となっていた二軒のジャズ喫茶、パモジャ(佐々木賢一氏・故人)、伴天連(瀬川正人氏・閉店も活躍中)が中心となって開催されました。東京からいくつかのバンドが招かれ、その中の一つ古澤良治郎クインテットに私は入ったばかりでした。四国よりちょっと小さく、首都4県の合計より大きい岩手各地から、近隣県の方々も一堂に会し、これを機に東北とのお付き合いが始まり、以来度々訪れ演奏しました。2011年までは。
あれから10年。時々しか会えなくなりましたが、皆さん元気でお過ごしでしょうか。2019年9月、鵜住居でのラグビー・ワールドカップに歓喜し、また同年12月、大槌のジャズ喫茶クイン再開の知らせが入った時の嬉しさは言い表しようがありませんでした。
今日お届けするこの曲は2019年11月に作り、タイトルは、私にとって東北への入口となった地、盛岡と付けました。ご存知の方は「あれ?古澤さんの曲?」と思われるかも知れません。その勘は当たりです。
Audio Playerあります⤵️
私は古澤良治郎クインテット〜良治郎バンドと、ずっと古澤さんの横でギターを弾いてきました。古澤さんの楽曲は、日本語の語感に深く根差し、旺盛な好奇心、探究心も手伝っての超言語的器楽曲。それを自分でドラムスを叩き、バンドを率い、作品化しました。一音一音の選択は妥協の痕跡などどこにも無く、深く印象に残りました。また、誰よりも遠くが見え、後ろも見えていた人です。それは景色も時間もです。4拍目のハイハットから次のハイハットまでの無音は、無限の宇宙が広がるようでした。そんな古澤さんから大きな影響を受けてきましたが、自分が作曲するときは、古澤さんの思うようなことを思わないようにしたりもしました。しかし今回、レゲエで曲を作ろうと浮かんだとき、そのフィルタを外すことにしました。ギタリスト大出元信(故人)を町で見かけて、音を聴いたことも無いのにそのままバンドに誘った古澤さん、私の良かれ悪しかれの性根も一瞬で見抜かれ拾ってもらった事は大きな幸運でした。もし出会わなかったら、こんな空間を知らずにいたでしょう。東北の方々とのご縁もこんなには生まれなかったでしょう。震災の2ヶ月前に旅立たれた古澤さん。突然いなくなって、こちらも10年が経ちました。
東北の皆様の安寧をお祈りします。
2021年3月11日 廣木光一
MORIOKA 4:41
HIROKI Koichi plays : guitar, organ, el-piano
programming : drums, bass, piano, synth
compose, arrangement, recording, mixing & artwork
recorded at hirokimusic TOKYO/ Feb. Mar. 2021
Produced by HIROKI Koichi
(c) 2021 hirokimusic / Rinsen
♫写真についてお問い合わせを戴きましたのでご紹介します。
2012.1.21@盛岡です。「赤以外の色を抜いたのですか?」という質問があったのですが、実際にこうでした。歩いていたら雪が降ってきたのです。